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イベントレポート

「伝統」と「学生のアイデア」の融合で、未来のゲームをハックする──懐かしい遊びが次々にアップデートされた「FUTURE GAME HACKATHON」

2015年9月5日(土)、6日(日)の二日間、六本木のgloops本社にて、未来のゲームをつくるハッカソン「FUTURE GAME HACKATHON」が開催された。
テーマは『デバイスを持って野外で遊べる、現実と仮想世界が融合したような次世代のゲームをつくる』こと。

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本ハッカソンは2017年卒学生を対象にしたインターンシップという形式で開催されたため、IT企業6社から現役の社会人エンジニア、合計11名がメンターとして参加。
ゲームをもっと進化させたい、イノベーションを起こしたいという共通の想いのもと、34名の学生が10チームに分かれて開発に没頭した。

Unityの講義、ドローンの登場など、制作意欲を刺激したオープニング

本ハッカソンでは、運営側が提供するAPIやデバイスも開発に使用していいというルールだったので、ドローンが登場した際には(販売価格を聞いて)場内は大盛り上がり。すぐに「ドローンとRing ZEROを使いたい!」というチャレンジングなチームに引き取られていった。

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優勝チームにはOculus Rift DK2やRing ZEROが進呈される

ハッカソンに入る前にはUnity社員の鎌田氏によるUnity講義も開催され、これまでUnityを使ったことがない学生でも今回の機会に使ってもらえるよう、実際に映像を見せながら使い方を説明してくれた。

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また、初対面でチームを組んだメンバーたちと打ち解けるためのアイスブレイクとして、5人のうち2人だけに共通する項目を考える「マイノリティ共通項ゲーム」が行なわれるなど、至るところに遊び心が散りばめられていた。

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懐かしい遊びを進化させるアプリが、スポンサー企業の大人たちを魅了

それでは早速、1日半という開発期間の中で実際に生まれた作品を紹介していきたい。

ちなみに本ハッカソンではメンターとして参加した企業から1名ずつ審査員を選出し、10チームの作品に対して
・エンターテインメント性
・完成度、実現性
・テーマとの親和性
の3項目を5点満点で採点。評価点をもとに、優勝と、各企業がそれぞれ1~2チームに授与するスポンサー賞を決定した。

まずはスポンサー賞に選出された4作品を紹介するが、特に審査員をはじめ社会人たちからの反響が大きかったのは 「位置情報を利用したけいどろ(どろけい)アプリ」 だ。

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彼らが提案する「スマホアプリを使って遊ぶ、新時代のけいどろ」のルールは下記の通りだ。

・泥棒側の勝利条件は「一定の金額を銀行から盗み出す」こと
・ゲーム開始時、泥棒側のアプリ画面には地図上の「銀行エリア」が表示される
・泥棒が銀行エリアに入ると、滞在している間ずっと所持金が増えていく
・泥棒が警察官の近くに一定時間隠れていると、「鍵」を奪うことができる
・泥棒が鍵を持った状態で牢屋に行くと、捕まった仲間を解放できる
・警察側のアプリ画面では「銀行に泥棒が何人侵入しているか」が見える
・警察が鍵を盗まれたときにはアプリ上に通知される
・警察「いや今触ったから。お前捕まったから」
・泥棒「えー、捕まってません(半ギレ)」
・開発者「最終的には泥棒さんサイドの善意によります」

警察が泥棒を捕まえたかどうかの判定機能まで実装されなかったのは残念だが、「位置情報を把握する」という技術があれば「けいどろ」がここまで進化するという点には個人的にも驚いた。

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泥棒側の画面にはそれまでに盗んだ金額が表示される

このけいどろアプリは、バンク・オブ・イノベーション、バンダイナムコスタジオ、gloopsの3社がスポンサー賞に選出。「懐かしい遊びとITを融合させ、新しいエンターテイメントを作っていた」という、テーマとの親和性が高く評価された。

また、「完成度が高く、遊んでみたくなった」「デモムービーが面白かった」といったクオリティ面でも評価されており、優勝に最も近いアプリだったといえる。

2社からスポンサー賞に選ばれた「プラネっち」は、 ユーザーの行動をもとにしてオリジナルの惑星を育てるアプリ

加速度、位置、画像、音声という4種類のセンサーをフル活用した本アプリは、開発陣が「スマホでゲームするのは当たり前なので、スマホ自体をおもちゃにしようと思った」と紹介。

たとえば

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カメラで人物を撮影すると、

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惑星に人が生成される。

このように、自分たちのインプットに対して何かしらのアクションが返ってくる。文字を入力することはなく、表示もされないので、インプットデバイスとして「スマホを持つこと自体が楽しい」と思えるようなゲームだ。

開発陣は「プレー自体は家の中でもできるんですが、外に出るとより楽しめるゲームだと思っています」と説明。

「いずれは画像認識の機能を強化して、撮影したものが惑星上にも出てくるようにしたいです。南国みたいな惑星を作りたいならハワイとかに行きたくなるし、砂漠を作りたいなら砂漠に行きたくなるじゃないですか」

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惑星全体のスクリーンショットを撮って共有することも可能だ

現役学生のみなさんにとっては昔の話かもしれないが、メンターとして参加した社会人、審査員たちの多くは「たまごっち」「デジモン」「ぎゃおッPi」「ラクラク ダイノくん」「ジュラペット」「ねこっちゃ」といった携帯型育成ゲームが社会現象になった時代を経験している。「あのときハマった育成ゲームも、現代のテクノロジーがあればここまで面白そうになるのか」と感動した社会人メンバーは多かったと思う。

楽しいゲームをつくるために重要なのは、開発者が一番楽しむこと

デモ時に会場を沸かせたのは、 日常生活の中でアプリ上のモンスターを成長させていくという育成ゲーム。

基本的にはモンスターにエサを与えて育てるわけだが、アプリを開いて「エサ」のマークを押し、カメラを起動させる。

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たとえば、スマホのカメラでコーラの写真を撮った場合は、画像認識によってアプリ内のフィールド上にコーラが落ちてくるという仕様だ。食べられないものを認識した場合はたらいが落ちてくるなど、遊び心も忘れていない。

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リアルタイムにモンスターを育てている感覚にこだわったということで、「スマホをポケットに入れて音楽を聞きながら歩いていると、鳴き声が聞こえてイベントに気づく」ということが起こる。実際に、

「今後は音声認識APIを使って、やさしい言葉をかけているとやさしい性格に、きつい言葉をかけているときつい性格になるという要素も実装したいです。あと、すれ違った相手を威嚇するみたいな対戦要素も追加したいです」

と、飼い主(開発者)が今後の展望を語っている最中にも「ニャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン」という鳴き声が響きわたり、たびたび話を中断させていたのが印象的だった。次回のハッカソンではライバルのプレゼン中に猫の鳴き声で邪魔できる演出が欲しくなった。

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スポンサー賞に選出したUnityの鎌田氏は「短い開発期間の中、無料で使える3Dモデル素材などを使わずにモンスターを1から自作したのが良いですね(笑)」と、モンスターへの愛情を評価。

「面白いものをつくりたい」と思っている人間が集まっている場だからか、スポンサー企業賞では、アイデアやデザインだけでなく「自分たちも周囲も楽しめたかどうか」という部分も重視されていた印象がある。

また、AppleTV、ドローン、Kinect、Ring ZEROという多くのデバイスを使ったアプリ「ドロトロマン」の開発チームは、デモ時に会場を一瞬で自分たちの『舞台』に変えた。

「ウルトラマンのように自在に空を飛ぶ」というコンセプトで、ドローンを飛ばして好きな場所の映像を観るというのが基本的な機能。さらにKinectによる動作認識を実装し、「ヒーローごっこ」をする身体全体をドローンのコントローラーにしようという試みだ。

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建物の都合上ドローンは飛ばさず、持って動かしながらプレゼンした

ウルトラマンのようなポーズを取ると対応したSE(効果音)が出るので、ウルトラマン気分を味わえる。たとえば両腕を前に出す(飛ぶときのポーズ)と「ゴオオオオオオオオオオオオオ」という音が出るし、パンチ、スペシウム光線などの攻撃モーションにも対応している。

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シュワッチ!

「1日半の開発期間ではKinectのジェスチャー認識とドローンの操作を連動させられなかったんですけど、最終的にはポーズと連動させたいです。あと、最終的にはスペシウム光線はMR(Mixed Reality)で表現したいです(笑)」

と、開発メンバーが語るように、チャレンジングな試みだからこそ完成度では見劣りしたが、アイデアや開発スタンスを評価したKLabがスポンサー賞に選出した。KLabのエンジニア於保氏からは

「最上級の褒め言葉として、『バカだなぁ』と思いました(笑)。こういうことを全力でやるのは面白いんですよね」

と、振り切った姿勢を評価するコメントが寄せられた。

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既存の遊びを進化させ、完成度も高かった文句なしの優勝作品

上記の作品を抑え、優勝作品に選ばれたのは、オール筑波大学チームが開発した 「現代風・借りもの競走」アプリ 。借り物競走をITで進化させ、「撮りもの競争」と名づけた。

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アプリを起動して対戦相手を決めると、「青い色の写真を撮れ」といった指示が出る。10秒が経過すると自動的にシャッターが切られ、画像認識機能で「お題との適合度」が何%かを判断して勝敗を決めるというのが1ゲームの流れだ。

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1日半での開発にしてはデザイン面でも作りこんであり、会場からは感嘆の声もあがった。ただ開発陣は「実装しきれなかった部分もあって…」と悔む。

「写真のお題として『人の顔をたくさん認識しろ』『標識の写真を撮れ』というのは面白いかなと思っていました。また、最終的にはオンラインで対戦できるようにしたいです」

優勝作品をスポンサー賞にも選出したDMM.comラボは「やはり完成度の高さが大きい。時間の中で最後まで作り切るという部分はハッカソンにおいて評価されるべき」とコメント。アイデアの良さに加えて「完成度」を兼ね備えた本アプリはまさに優勝にふさわしいクオリティだったと思う。

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ちなみに、デモ中の質疑応答では「質問というか意見なんですけど」という参加者から

「人の顔をたくさん認識しろ、っていうお題は『笑顔の写真をたくさん撮れ』にしたら面白いと思いました。どうやって笑わせるかっていう戦略も必要になるし、やっぱりゲームを通して笑顔の人が増えていくのは素敵じゃないですか

というコメントが。ゲームによって人を笑顔にする、という着想には会場から賛同を示すかのような拍手の嵐が湧き起こった。

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ゲームの未来は、脈々と受け継がれた伝統の延長線上にありそう

本ハッカソンの全体を振り返るにあたっては、Unityの鎌田氏による表彰式時の講評を紹介したい。

鎌田氏が「こういうイベントにはじめて参加した方はどれくらいいますか」と聞くと、多くの参加学生が手を挙げた。しかし「今回、自分の結果に満足している方はいますか」と聞くと、手を挙げる学生はいなかった。そこで

「この二日間で、みなさんは自分の身の丈を知ったと思います。たぶん、それが一番の副賞だと思います」

と話すと、会場からは大喝采。

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インターンシップ形式で開催されたため、開発時には各チームがメンターの力を借りる場面も多かったと思う。現役の社会人エンジニアとの差を感じたり、実装できると思っていた機能が思わぬエラー、バグで実装できずに挫折した参加者もいたはずだ。

今後も「開発者」としての人生を歩んでいく若きハッカーたちが、今回の経験を生かしていつか未来のゲームをハックする実力者に成長していくことが、本ハッカソンを開催したIT企業6社の願いだと思う。

2日間の締めくくりには、ハッカソン会場としてオシャレなオフィスを提供してくれたgloops社長・池田氏が、「どの作品もよくまとまっていて、テクノロジーの力でエンターテイメントが進化して、外に広がっていく可能性を感じた」と総括。閉会後の懇親会ではお互いに健闘をたたえあう学生たちの姿も目立った。

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【取材後記】
昨今ではハッカソン界隈も「いろいろな参加者がいる」という点が議論を呼んでいるように、もしかしたら「審査員が大人たちだから」という理由で懐かしい遊びをベースにアイデアを練ったチームもあるかもしれない。

ただ、個人的にゲームやエンターテイメントという領域は「既存のものに、新たな次元・入力値・制限などを加える」ことで連続的に進化してきたと思っているので、今回生まれた10個のアプリの多くが従来の遊びをベースにしていたのは自然なことだと思う。

ということで、本ハッカソンのような「オープンな共同開発」の場をもっと増やし、多くのゲームをつくってきた企業やベテラン開発者の経験と、若い人材の型にはまらない発想力をうまく融合させることで「次世代のエンターテイメント」が生まれる予感がしている。

まだまだハッカソンという文化は日本で浸透していないが、開発の現場がよりオープンでフラットなものになることを願わずにはいられない。